アプローのときの、回廊突破作戦(http://blog.tendice.jp/200612/article_74.html

鍋の国初陣のSS。

 

 

「ドキドキするね」
「うん」

5機の星詠号のコックピットからはそれぞれバディ同士の会話が聞こえていた。
緊張をほぐす為か、昨日食べた御飯や萌え話がほとんどだった。

この回廊突破作戦は、『鍋の国』の仮想飛行士達にとって初めての戦闘である。
芥国防衛戦では多くの死者を出したと伝えられていた(この時点では)。
しかも今回、共和国連合軍が出した作戦計画書は“夜明けの船”の突破を最優先事項とし、パイロットの生還など二の次どころか三の次だった。

死んでも守りたいものがある――でもまだ死にたくないにゃぁ。
本音。

注水が始まる。ハッチが開き、次々に僚機が暗く深い海へと排出された。
見れば集結した共和国連合軍の輸送艦から、幾つもの泡の軌跡を描きながら各国のアイドレスたちが戦場へと踊り出ていた。
その数36機。現在の共和国連合軍が出せる最大戦力だった。
度重なる藩王会議で『鍋の国』が任ぜられた役目は先鋒。固く、推進力のある星詠号、しかも一応最高の根源力を与えられた機体なのだから、初陣といえど、ミサ王は拒絶することは出来なかった。
「やるっきゃないよねー、あはは!」
「うんうん。出れるだけで幸せだよ」
複座機を設計した為に自由戦士では芥防衛戦(ガンパレルート保守戦)に参加できず、技手・まきは涙を飲んだと愚痴っていた。

作戦通り単縦陣を組む。マニュピレータによる手信号。
後続に各国の白兵戦アイドレス・流星号が続く。
急ぐ心がアクセルをベタ踏みさせたのか、5機の星詠号は気がつくと皆より少し先行してしまったことに気付いた。
「もうそろそろ、かしら」
「てゆーか、敵艦隊、もうモニターから肉眼で確認できるんですけど…」
「あはー、センサー皆無設定だからね、星詠号は」
「えー!じゃあこのセンサー根源力1700ってのは飾りですかっ?」
「…たぶん。」
にゃぁ、とかたわらの猫士が鳴いた。笑っている。
「と、とにかく、行くよ!夜明けの船を何としてでも送り届けるのが私たちの使命なんだから!」

ごふっ!

5機の星詠号のY型魚雷管が一斉に火を吹いた。
『鍋の国』だけに火力は凄い。破裂する魚雷の弾幕が水域をかく乱する。
「行ったぁ〜!」
機動力で勝る流星号達が、弾幕の中を敵艦隊に向かって次々に突進していった。
「私たちも…!」
水流に逆らい重い機体を敵艦隊に走らせる。

共和国連合軍の識別信号が一つ、途絶えた。そしてまた一つ。
ああ、本当に戦っているんだ。サイコロ一つで、自分達は死ぬんだ。
けれど、負けられない。
味方機を援護する為にガンポットを放つ。
4つの腕でカトラスを、ロングスピアを振う。
爆発の破片が幾つも機体に当たり、シールドされたコックピットにもカンカン!と耳障りな音を響かせていた。
何をどう戦ったのか、あまりよく覚えていない。
ただ、がむしゃらに武器を振った。
持てる弾は全部撃った。
気がつくと、敵からの砲撃が途絶えていた。それだけ。

ゴウ、という大きなスクリュー音がして、振り向くとそこに“夜明けの船”の大きな船体があった。
自分達が守った、船。
時空振動の発生ポイントは、まるで陽が差したように明るく、海の色を碧く染め抜いていた。その空間に向かって、ゆっくりと“夜明けの船”は進んでいく。
すれ違い様、そっと船体に触れる。

そんなはずないのに、船体は少し暖かい気がした。